鹿の角は毎年生え変わる、ってご存知でしたか?
今年の私の自己研修課題が「鹿」なのですが
今、この時期は新しい角が生えてくる、とっておきの鹿が見られるので
昨日、雨の中、奈良公園に行ってきました。

この丸くて毛がふわふわしているツノを袋角というそうです。
ここから伸びていき、袋状の柔らかい部分が取れて完成形のツノになるのですが、
生えたてのかわいいツノは今、この時期しか見られない貴重なものです。

また6月ごろに少し伸びた袋角と夏毛の白い斑点を見に来ようと思います。
もう一つの目的は、興福寺の国宝館。
初めて訪れたのですが、時を忘れるほど夢中になりました。
梵天・帝釈天立像の優美な美しさ、
有名な阿修羅像の蒼い真剣さ、
迦楼羅像の奇妙な神秘さ、
撮影もスケッチも許されないので、凝視して細部を捉えるようにしました。
また昨日は「春の北円堂特別開扉」にあたり
茶友の一人である画家の先生がしばしばモチーフにされている
運慶晩年の傑作「無著」像もご開帳になっていました。
気象状況が豪雨、時間は開館直後、という
幸運にも人気の少ない環境でゆっくり時間をかけて拝見できました。
無著像は仏像というカテゴリーを超えて彫刻界全ての世界最高峰と言われる作品です。
人物の複雑な内面を表す一瞬の表情を彫刻で表現しています。
ここに立つと運慶という巨人に思いを馳せずにおられません。
全ての作品の中でも特に写実性、というか、肖像性を持った作品だからです。
周囲の人々の複雑な人生をつぶさに見守ってきた人(無著)の晩年の表情はこうだ、と運慶は思ったのか。
運慶自身がこの表情のような境地にいたのかもしれません。
茶友の画家先生はどんな気持ちで無著を絵に描いたのだろう、と思いながら・・
静かな雨の奈良を後にしました。