宣材に必要になって、昨日院内の写真を撮ってみました。

当院もこの春日町に移転して5年になり
徐々に内装も充実してきました。
先日、素敵なご婦人が、
「ここは本当に綺麗だから、ここに来る時は、少しおしゃれしてくるのよ」
とおっしゃってくださって嬉しくなりました。
私自身は、皮膚科は肌を見せるところなので、
着脱のしやすい気軽な服装で来てくださったらと思っています。
でも、内装に感じるところがあって、お洒落をして来てくださる方が
おられることも、楽しい気持ちになりました。
この画面の中にある絵についてご紹介させてください。
左端に見えるのは
栗田咲子
松とアイリス

キャンバスの上に油絵具で描かれた作品です。
軽く描いているようで、感嘆するような高度な絵です。
順番に見ていきましょう
松の背景はキャンバス地そのもので、彩色されていません。
おそらくは栗田先生、キャンバスをじっと見ていて
その微妙な生地色の濃淡を空にしたら面白いのでは
と思われたのかなあ。
この技法はしばしば日本画に用いられます。
私が思い出すのは円山応挙の雪松図屏風です。
雪の積もっている表現を、紙の地色の白を塗り残すことで表現した絵です。
栗田先生は逆に松の枝を白い絵具でけぶるように表現しながら、
松の樹肌の色目にも細心の注意を払い
のどかで懐かしい気持ちにさせる遠景を描いています。
そして手前にはアイリス。
これも日本画でも同種の杜若はしばしばモチーフになることから
松と合わせることで私たち日本人の郷愁を誘います。
そしてサラッと描かれた鉄製の野外用の椅子。
こちらから風景をゆったりと眺める気持ちに誘います。
高度ですね。さすが栗田先生です。
壁の上方にあるのは
越野潤
左から
WORKS16-7(lemon)
WORKS16-4(light blue)
WORKS16-6(ivory)
WORKS16-2(red)

アクリルのボックスに
シルクスクリーンで色を何度も何度も重ね
この繊細な透明感のある色目を生み出しています。
ぼうっと発光するような不思議な質感です。
この日本人ならではの手技の器用さは浮世絵の系譜を継ぐ作品とも言えそうです。
それなのに色は日本古来の色のセンスを超えており
世界のどこで発見されても評価される作品だと思います。
色には感情、風景、思い出、などが想起されます。
越野先生の選ぶ4色は、穏やかで清潔で理知的ですね。
越野潤先生も栗田先生と同じく京都市立芸術大学大学院卒業。
主席卒業だったとうかがっています。

奥の壁に見えるのは
サイモン・フィッツジェラルド SIMON FITZGERALD
英国人で日本に長く在住。
天台宗の修行もし、京都市立芸術大学油画専攻教授でもあります。
坐禅を日々行い、作品制作について深く意義を探り続けるサイモン先生。
その厳しいまでも真摯な姿勢で生み出される作品は
これほどピュアで新しい喜びに溢れています。
素晴らしい。
私たち夫婦が大変お世話になっている
ギャラリーヤマグチクンストバウの
公式サイトの中にある
サイモン先生の文章もぜひお読みください。
最後に、左の奥の壁に架けてある鏡に写っている絵

清宮亮子先生の
「室内」1958年(昭和33年)
次の写真の左にあります。

四角が重なるような構図ですが、題名の通り
テーブルと椅子と絨毯を描いたものだと理解しています。
清宮亮子様は木版画家の清宮質文先生の奥様です。
今から66年前にこれほどのモダンな作品を描かれるほど
進んだ感覚をお持ちだった亮子様ですが
この作品発表の翌年に清宮質文先生とご結婚されると
質文先生の作品制作活動を優先されてほぼ制作は中断されたように
うかがっています。
清宮質文先生の作品の中には奥様がモデルになっておられる
作品もあり、仲睦まじいご夫婦であり
誰よりも質文先生の作品の透明な世界観を理解しておられた
伴走者であったのかなあ、と思います。
今日は大寒。今から診察です。
今日もどんな患者さんがお越しになるでしょうか。
posted by 皮膚科芦屋柿本クリニック at 10:48|
医療以外のつぶやき