2023年02月06日
窓と国立国際美術館。
国立国際美術館の「ピカソとその時代」展に行ってきました。
展覧会の詳細は公式サイトなどに任せて、今回は「室内」について感じること多く、書いてみます。
現代の展覧会らしく、ほぼ全ての作品が撮影可能、ネット拡散推奨ですので、遠慮なくそうします。
ニースのアトリエ(アンリ・マティス)・・国立国際美術館で公開中
マティスは室内と窓とそこからの風景を好んで描いた作家です。
室内の光景は、とてもプライベートなもののことが多く
上の絵の様に自分のアトリエの風景や
下の絵はパリのポンピドゥー・センター国立近代美術館所有の絵ですが
モデルと自分自身を描いたり
下は今回の展示作品ですが、娘がベッドに横たわっていたり
いずれも従来のアカデミックな芸術作品ではあり得なかったやや下世話な画面で
プライバシーをチラリと覗かせることで見るものの興味を引きつけます。
このお嬢さんはマルグリット。
眠るでもなく目を開けて体を丸め、やや憂鬱な表情で何かを想っている風情です。
マティスが
自分に似て多感な娘を心配しながらも愛しんでいることが画面から感じられ
マティスの内面そのものが絵の魅力となっている作品です。
そういえばこの絵も
マティスのモデルも左にいるマティスに無関心で、姿よく見せようという気もなく
ややだらしなく座っています。
この絵を描くマティス自身も、その開けっぴろげな楽屋のような風景を面白がって
絵にしたのではないかと思います。
プライベートな室内の向こうには窓と風景。
窓の向こうは「世間」「現実」なのか、
そう考えると沈鬱なお嬢さんに世間は冷ややかな天候のようなものなのか
空想が広がります。
「窓」といえば、同じく国立国際美術館で開催された伝説の展覧会を思い出します。
絵画の庭─ゼロ年代日本の地平から(2010年)
そこで見た栗田咲子さんのこの絵
室内には動物やベビーカラーの毛布。
部屋の主の少女は扉の向こうへ出て目から上だけ出して外を眺めています。
室内は彼女の心の中そのもの。
この少女に必要なものはふわふわの動物たちと包んでくれる毛布。
そしてそこを出て外を見つめる背中には、好奇心と尻込みする気持ちの両方が浮かんでいます。
この絵を見た時に、「マティスの解釈を現代に落とし込んだ作家」と思いました。
今でも大好きで、絵葉書を壁に飾っています。
長ーい前振りでしたが
当院で、最も来院された方がお尋ねになることの多い、この作品の作者が
栗田咲子先生です。
菖蒲の花
座る人を待つ椅子
遠くに見える松
空想の世界をいくらでも広げてくれる名作です。
posted by 皮膚科芦屋柿本クリニック at 16:07| 医療以外のつぶやき