兵庫県立陶芸美術館の
現在の展示は3つの展覧会の同時開催なのですが、
そのうちの一つ
「初代 和田桐山(とうざん)ー兵庫が生んだ名工ー」
をご紹介します。

「初代・和田桐山(とうざん1887〜1967)」
の
私の作成したまとめ
・兵庫が誇る大名工
・なんでも作れるスーパー凄腕
・名だたる財界人のご贔屓筋
・現在でも全国の茶会で作品が愛用される高い知名度
第1章 兵庫が誇る大名工
最初の作陶は父の窯業 兵庫県武庫郡大社村(現・西宮市)
招聘されて 武庫郡精道村(現在の芦屋市の春日町・当院の町内)で「打出焼」設立に関わる
川辺郡尼崎町別所(現在の尼崎市東桜木町)に「琴浦窯」設立

(大社村の窯の正確な場所は調べられませんでした。詳細住所ご存知の方は教えてください。)
私どもにとっては地元も地元、なのでした。
第2章なんでも作れるスーパー凄腕
素晴らしい集中力で中国陶器の最高峰を写していきました。
それができた背景には、いくつかの理由があります。
まず、抜群の描写力、画力の持ち主であったこと。
時に本歌を超える力量を見せつけられます。
そして優れた能書家であったこと。
絵も描けるけど、字も書けるっていうのは最強。

それから、後に述べますが、それら本歌の持ち主である
財界人との交流があってこそ、のことだったようです。
ではその写しの作品を、本歌(リンク先)と共に見てまいりましょう。
万暦赤絵写龍文花瓶
は五彩龍牡丹文瓶 ←クリック

細部はアレンジしておられます。


本歌より力強い感じですね。
色絵鹿鶴紋平水指は
五彩金襴手鹿鶴文鉢 ←クリック


南京赤絵写龍文四方水指
は五彩龍文四方水指 ←クリック


スケッチに似た手のものがあります。


持ち主から借りて写したものだと思いますが、その描写力に驚きます。
赤地金襴手宝相華唐草文鉢
は赤地金襴手宝相華唐草文碗 ←クリック


鮮やかな金彩の技術で蘇らせて、本歌に遠慮をしてか「鉢」にしています。
写し物は、日本の陶芸史では「コピー」とは別物です。
写しに挑戦する作家にも立派な看板があり、
本歌へのリスペクトがあり、時には本歌を超えるものもあります。
また、すでに本歌は戦火などで紛失しているものも多いのです。
私は、
「おおおおおお、この作家がこの写しに挑戦したのかあああ」とかが
ツボになってしまう体質です。
会場にはもっと多くの中国陶器の写し物がありますよ。必見です。
第3章名だたる財界人のご贔屓筋
まずはこれをご覧ください。
早押しクイズ「これは何だと思いますか」
ご近隣の方々には簡単なすぎるかなあ・・・・・

「緑釉金彩楽器形皿」
はい、正解!
早かったですね。
そう
宝塚音楽学校の校章ですね。
となると、これをオーダーしたのは・・・・・・
またも早い!!
そうです。小林一三翁。
逸翁(いつおう)です。
逸翁はこの他にも楽しいオーダーを数々なさっておりまして
例えばこれ、

色絵譲葉図四方鉢
日本画家の須磨対水が大胆な筆でユズリハを描いています。
関西を代表する作家同士の合作です。
二人を結びつけて茶道具を作らせる。お大尽の楽しみ、って感じですね。

そしてこれは・・・・

犬児置物(えのころおきもの)
また、無茶振りな感じがします。
というもの本歌は、逸翁愛蔵の長沢芦雪作「降雪狗児図」ではないでしょうか。
つまり掛け軸の絵です。キャプションには書いてないけど、そんな気がする。
「これ、立体で作ってよ」って感じだったのかしら。
お大尽・・・・・・・・。
そして叶えてしまう名工よ・・・・・。
お互いの美意識の昇華を見たように思いました。すごすぎます。

これも、合作の作品。

漆塗落葉文振出
阪急工美会のメンバー、漆工の三砂良哉との合作です。
少し脱線しますが、漆工の三砂良哉は、逸翁の求めに応じて
歌劇の楽譜を金彩で棗に描いたりする
今でもモダンで素敵な茶道具をたくさん残しておられ、
池田の逸翁美術館で拝見することができます。
この他にも
白鶴酒造の嘉納治兵衛氏
山口銀行頭取の山口吉郎兵衛氏
との交流の品も展示されていました。
優美な阪神間のお茶文化の時代を華やかに彩った桐山。
桐山の存在が、どれほど数寄者の楽しみを色濃くしたことでしょう。
そして桐山自身もどれほどその栄誉を味わったことでしょう。
想像するとワクワクドキドキします。
第4章 現在でも全国の茶会で作品が愛用される高い知名度
『初代和田桐山展」、兵庫の良き時代の魅力満載の素晴らしい展覧会でした。
桐山の名は親族に受け継がれ、現在は第4代桐山先生がご活躍です。
桐山作品は、上記のように華やかな絵付けが魅力ですので
どちらかというと裏千家の方々に好まれる、と言われていますが
私は表千家流派なのですが、歴代の桐山先生が大好きで
華やかな中に品のある色選びが上品で
阪神間のおおらかな風土を感じ、京都とも違う色絵だと思っています。
今日もどこかのお茶会で、歴代の桐山先生の作品はきっと使われています。
これが兵庫の、阪神間文化の茶道具なのかあ、と思っていただけると
県民として嬉しいです。
同時開催の2つの展覧会も、これまた見所が深すぎて
体力あったらまたそのことも書きます。


おまけ
さてお腹がすいたので、お隣へ向かいます。
陶芸美術館の並びにある
陶の郷(すえのさと)は、

公式サイトより
広い敷地の中に
買い物ができる窯元横丁↓や


丹波焼の窯元、約50軒の展示販売施設です。


粘土細工や絵付け体験ができる陶芸教室も団体客でいつも大賑わい。
私はレストラン「獅子銀」で
丹波黒豆入りコロッケを堪能しました。
川向こうの山の斜面には多くの窯元がありますから、ここに車を停めて
窯元巡りも楽しいですよ。
夏休み、ぜひ、立杭へ!
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