時代が進み、現在において昔のドラマのように「メス」を使うことは
年々減少してきています。
腹部の外科も、内視鏡手術が増え
皮膚を切開することはできるだけしないようになってきました。
その背景の一つに、
「皮膚を切開する」
「皮膚を縫合する」
という技術の奥深さ、伝承の困難さ、もあることは否めません。
私のクリニックでも、
ホクロの手術の多くはメスではなくサージトロンを使った低侵襲の方法を用います。
しかし、
メスを使っての皮切の方が、美しく治る場合には、その旨を説明し
切除と縫合を行います。
例えば
皮下腫瘤

そして大きな腫瘍

私が使うのは、フェザーの使い捨てのメスです。
1回使い切りなので、刃物が摩耗することがありません。

その皮切に際して、気をつけないといけないことは
1 深すぎないこと 深すぎると、皮下の腫瘍を破裂させてしまうことがあります。
例えば粉瘤

最初の皮切は少し斜めに刃を倒します。

切り進む時は少し刃を立てて刃の中央で切ります

腫瘍の上に差し掛かると刃をさらに立てて先の先で切り進めます。

この繊細で力のいる感覚は、伝統工芸士の方なら分かっていただけるかも
という世界です。
2 浅すぎないこと 浅すぎると、切開線が途切れます。
3 ためらい傷のように途切れず、一気に一筆で浅すぎることと繋がるのですが、皮膚を数センチから10センチ以上、
一気に切り、しかも上の開始点と下の終点はぴっちり合わねばなりません。

ためらい傷のようにギコギコと繋いで切っては良くないです。

皮膚は、皆、違います。
本当に驚くほど違うんですよ!!
目指す切開線を切ることが大切で

すいっと早く、正確に

時に刃を立てて(背中などの分厚い皮膚)力を込めて

時にはすくって(ぷよぷよの皮膚の場合)ゆっくりと

これを目指します。

これができたら何が違うかというと
手術時間が大幅に短くなります。
切られた断面に無駄な傷がないので、傷の治りが早く美しいです。
また機会があれば、縫合の手技の技術のお話もしますね。
posted by 皮膚科芦屋柿本クリニック at 15:47|
ホクロや皮膚癌など皮膚腫瘍全般