西宮北口の東宝シネマで3月28日まで「午前十時の映画祭」で
愛と哀しみのボレロが上映されており
マイベストフィルム、久しぶりに劇場で観ました。
西宮北口以外にも全国で観られるようです。


私の私物パンフレットです。
音楽が好きな方、ダンスが好きな方、
パリが好きな方。
そして10代20代のあなたに観てほしい映画です。
物語は
1981年、
赤十字とユニセフの主催するチャリティーコンサートが
パリで開催されたというフィクションの設定が根幹にあります。
エッフェル塔をバックにラベル作曲のボレロを
生演奏するオーケストラ指揮者
歌う歌手
踊る舞踊家
世界中に生配信されたこのコンサートには
各界のスターが呼び寄せられており、
この映画は、この日集ったスターたちの家族がたどった
ちょうど日本の昭和時代に相当する物語群です。
それぞれのスターは
指揮者カラヤン、
作曲家グレン・ミラー、
舞踏家ルドルフ・ヌレエフ、
歌手エディット・ピアフ
がモデルと言われていますが、ずいぶん違っているところも多く
先入観はいりません。
さてここで
もし、混乱して答えを探しておられる方のために
最も複雑な一家族のことを、私なりに解説しておきますね。
アンヌ というバイオリニストと
シモン というピアニストの話です。

アンヌ

シモン
まず、2人は元々別の劇場の演奏者で、知り合いでもない、というところから
話は始まります。
アンヌの演奏する劇場の方が大きくて豪華で客席もブラックタイのドレスコードがあるようです。
シモンが演奏する劇場は、少し場末です。
ある日、アンヌの劇場で盛大なショーが開かれていました。
良き時代のムーラン・ルージュのようなショーです。
そのショーの最中に、ピアニストが意識不明になります。
彼は劇場から運び出され、どうも具合が良くないらしく
次のシーンでは、新たなピアニストを採用するためのオーディションの場面になります。
そして、そこで場末のピアニストだったシモンが合格して採用されて
アンヌと同僚になり、結婚します。
ここまでのシーンが早すぎて、理解するのに私も何回も観ました。
そして、第二次世界大戦が始まり、パリはドイツ軍に占領されます。
シモンとアンヌはユダヤ人でした。
そしてある日、同じアパートに住むユダヤ人の家族らと共に、収容所に送られます。
シモンとアンヌは2人の間に誕生した乳児を抱いたまま、多くのユダヤ人と一緒
に立っておくしかないコンテナ列車に載せられます。
シモンは、この子だけでも助けてやりたいという望みをかけて
列車が停車していた夜の駅の線路上にトイレ用の床穴から乳児を下ろします。
そのまま2人は収容所に送られ、夫のシモンは亡くなり、アンヌは収容所の囚人楽団の1人として
無表情にバイオリンを弾かされます。
2人の子供は、その駅の横に住む男に見つけられますが
男は子供が身につけていた手紙とお金を盗み
手がかりを奪ったまま50キロ離れた教会の扉の外に子供を放置します。
ここから、すごく混乱する演出なのですが、この後で
シモンたちの子供を育てることになる神父を演じているのが、シモン役と同じ俳優なのです。
終戦を迎え、
市民たちがドイツ軍からの解放を歌って踊って平和を喜ぶシーンがあるのですが
ここで拾った子供を抱いて一緒に踊っている神父を演じているのが
シモンと同じ役者なので、
え?シモンは生きてて神父になったのかと思いますが、違います。
そしてもっといけないのは、拾われて神父に育てられた2人の子はロベールと名付けられるの
ですが、
この子が成人したら、またシモンと同じ役者がこの息子を演じるのです。
つまり3役。
で、その頃には神父役の人はこっそり別の俳優に変わっています。
ちょっと似た人です。
そこ、本当に注意、です。
そしてアンヌは子供を探し尽くして心を病み、病院に入っていくのですが、
アンヌの探している子、ロベールは弁護士として自分の顔が表紙の本を
出版し、それを見たアンヌの友人がアンヌとシモンの結婚式の写真を持参して
ロベールにあなたのお父さんを知ってると思う、と伝えるのです。
弁護士として仕事のあるロベールは、自分の出自が分からない苦しみからか、
人を信じられず秘密主義で不実な生活を送っていました。
そのため、息子とは全く折り合わず
息子は音楽の道に進み、素晴らしいヴォーカリストの片鱗を
のぞかせます。
ロベールの育ての親である神父はロベールの実の親が音楽家だったと
知った時に
「どうりで息子が音楽に惹かれるわけだ」とつぶやきます。
ロベールの息子は赤十字のチャリティで
ラベルのボレロに合わせて素晴らしい声で歌うのでした。
。。。。。。。。。。
すごく内容の濃い経緯ですが、映画ではナレーションもなく
淡々と素早く進行するので、この解説がないと理解が難しいと思います。
ここだけ掴んでおけば、他のファミリーたちの親子関係はもっとわかりやすいです。
映画の魅力は
なんといっても
音楽:フランシス・レイ、ミシェル・ルグラン、ピエール・バルー
振付:モーリス・ベジャール
ボレロを踊るのは、ジョルジュ・ドン
憧れの魅惑的な綺羅星。
今見ても、超えていくには高すぎる山のように思えます。
その音楽ととびきり華やかなショー、ダンスを堪能するだけでも
未来の糧になりそうで吸収することの多い映画でした。
そうだ、
音楽のピエール・バルーは
当時すごく聴いていたのがこのLPで今も宝物で新品同様です。

『ル・ポレン (花粉)』 - Le pollen (1982年)
令和最大の数寄者様ともゆかりの方だったと目にしたことがあります。
ぜひ、この春休みの機会に劇場で。